その人らしく生き生きと生活するために必要なものはなんだろうか? 精神疾患を抱えて生きる人から見えるもの
私は縁あって現在障害者就労支援施設で支援員として働いています。
そこでは知的、精神、身体障害を持つ若者から年配の方まで多くの人が一緒に作業をしたり食事をとったりして生活しています。
知的障害を抱えている方の多くは、純粋で明るく、接していてこちらを温かい気持ちにさせてくれます。
精神障害を抱えている方は、人生で躓き多くの悩み苦しみを抱えています。
問題を多く起こすのも精神を患っている方に多く、それは本人の苦しみに起因していると思います。
そんな彼らを通して、人間が生き生きと生活していくために何が必要なのか自分なりに考察していきたいと思います。
最近、仲間に加わった一人の男性
彼の特徴
40代前半で高学歴の男性です。
長身で痩せ身、血色が悪くいつも青白い顔付き。
無精ひげを生やし長く薄い髪。
彼は西洋医学を拒否し、呼吸法や気功などにより自分の病を退治しようと頑張って来たようです。食事にも気をつかい私たちが普段生活していても聞くことのないような名称の自然の栄養食品を常備しています。一時期自分の体調を良くしようと筋トレを頑張っていたようですが、余計体調を悪化させたことのことでした。
彼から伝わる印象ですが、神経症的な雰囲気を放ち、とても繊細で弱々しく自信がない。頑固、融通の利かなさ、注意に対して過度に反応し落ち込みやすい。力強さ自信安定感に欠けています。
そんな彼が彼らしく生き生きと輝く人生を歩むために必要なものはなんだろうか?
「運動?食事?睡眠?」
彼は人一倍健康意識が高く、それらについては既に考えて実行している。
「良い人間関係?」
そもそも精神を病んでしまった人は良い人間関係を築くことがとても難しくそのことに深く悩む人が多い。(例外あり)
「投薬治療?」
彼は西洋医学を拒否。私自身、投薬治療には懐疑的な部分があります。
鬱が薬により治ったなんてことを耳にしたりもしますが、一方で薬により治るどころかその量を医者によりどんどん増やされて薬漬けにされその副作用で余計に苦しむ人が多いことを目の当たりにしてきました。
そもそも薬で精神疾患が治るならば、この世の中に精神病は存在しないはずです。
ただ苦しみを多少緩和してくれる面もありますから、完全に否定するつもりはありませんが薬だけに頼るのは危険だと考えています。
などなど、いろいろと考えてみますが今のところ辿り着いた答えのようなものは...
自尊心の回復
この点に思い至りました。
まず彼はもともと高学歴で成績優秀。いわば競争社会の中で勝ち残って来た人間である。しかしその競争からある時脱落し、現実の壁の前に打ちのめされ自分に絶望した日々を送って来た。
「こんなはずじゃない。自分はなんてみじめな人間なんだろう。自分には生きる価値がない。」
まわりの人間と比較しては、どんどん自身を失い自己嫌悪に苛まれて来たことだろう。
心を病み、もともと持っている能力も影を潜めていき劣等感から周囲との関係から我が身を遠ざけてきた。それでいて疎外感も強め孤立していく。
負のスパイラルにハマって、なんとかそこから抜け出そうと、東洋的な思想に縋るが押し寄せる負の渦から這い上がることができず、それでももがき続け心身を疲弊させていった。
「生きているだけで、人に迷惑をかけてしまう。」
「自分は生きていても仕方がない。」
そう思っているんじゃないだろうか。
彼には価値があり、生きていてもいい。
自尊心、自信を回復していく必要があると思う。
そのために我々支援員ができることはなんだろうか。
「それはほんの些細なことでもいいから彼のいいところを見つけること。」
かすかな、ほんとにかすな光を見出しそこにフォーカスする。
自尊心を高めるってほんと難しいと思います。自分自身に置き換えてみるとその難しさが簡単に実感できます。インターネットで「自尊心を高める方法」で検索すればたくさん出てきます。私自身も精神を病み藁にも縋る思いでいろいろやってみましたが、思うようにいきませんでした。
その人の良い面を見ることも簡単なことではありません。しかしこの効果はもの凄く大きいと思います。精神を病むと人の視線には敏感になります。これは防衛本能から来ています。言葉や態度に出さなくても相手が自分に抱く意識が肯定的なものか否定的なものかはすぐにわかります。
自分の良い面を見てくれる人の存在がどれだけありがたいことか。それがあるのとないのとでは天国と地獄との差があります。
私一人の力は微々たるものですが、これが二人三人と増えていけば大きな力になります。
冒頭でも述べましたが、精神を病むと苦しみが原因で問題行動起こしやすくなります。人から嫌われ人が離れていき孤立します。
だから絶対にやっていけないのは、相手を嫌うこと
だと思っています。
精神疾患をもっている方は時にその対応が難しいです。ひどく反抗的で乱暴だったり我儘だったり
それら問題行動の裏にはその人の苦しみが存在しているということを忘れていけません。
もう一点、それらの問題行動は私自身の苦しみの投影にすぎない可能性もあるということ。
相手を通して自分の嫌な面を見ているのです。
だから謙虚な気持ちで一緒に成長していく姿勢が大切なのだと思います。
ここまで書いてきましたが、私たちが出来ることはあくまでお手伝いであって本人が本当の意味で人間性を回復していくためには、自分自身で気づき主体的、積極的に行動していかなければならないと思います。
人間は生まれて来てやがて死んで行きます。なんともはかない存在である。だからこそ、その命は価値があり貴重で尊いものであると思います。
人間のみならずこの世のあらゆるものも等しく尊い。
人が自然や物、人間を含めたあらゆる生物を尊ぶ。
そんな世の中があったら幸せだろうなあ
尊ぶ
ということをこの記事を書いていて考えさせられました。
ありがとうございました。